腹圧性尿失禁(全般)

腹圧性尿失禁(尿道過可動)

疾患の特徴 初期の場合は咳やくしゃみの腹圧で尿失禁になります。多くの患者で、10年から20年後に膣から膀胱が脱出する膀胱瘤になるケースもあります。尿道が落ちている尿道瘤は、それは、通常、うずらの卵のサイズで、弾性軟です。また、膀胱が落ち始めた初期は腹圧性尿失禁を認めやすいのですが、膀胱瘤が進行すると膣におちた膀胱に尿が残るので排尿困難になります。膀胱瘤が進行すると排尿は困難になり、残尿が常に大量に存在し、尿管や腎臓も水圧がかかるようになります。さらに進行すると腎不全になります。とくに糖尿病を有していると腎不全への進行がはやまります。

原因 出産により骨盤底筋肉に損傷がおこると生じます。出産が大変長時間であったり、胎児が巨大な場合は、その頻度が高いです。骨盤底への損傷が大きいと出産直後から、軽いと更年期から膀胱が下垂してきます。38歳以上の高齢出産では罹患しやすいです。また、出産後に肥満がある場合は尿失禁の出現時期が早まります。骨盤底筋群の中で尿道関係で損傷を受けやすいのは、恥骨と尿道をつなぐ筋膜組織で、とくに骨盤骨との結合織が外れると尿道が膣側に落ち込むので尿道瘤と言います。といいます。多くの尿道瘤では、膀胱が膣側に落ち込む膀胱瘤を時間差はあるものの合併しやすいです。

診断 初診時に膣から医師が指を入れて必要な部分に押し当てます。その時に、患者本人が咳払いなどの腹圧をかけて膀胱瘤の程度を診る内診が必須です。恥骨尿道靭帯がが左右均等に存在することはまれです。MRI検査により骨盤内の観察が必要です。MRI検査では、尿道の長さ・厚みの測定、恥骨尿道靭帯、恥骨尿道直腸靭帯の損傷の有無を見ます。また、恥骨子宮頸部の距離、恥骨肛門括約筋の距離などの距離を比較することにより膀胱尿道の周囲の筋膜組織が軽度な損傷なのか重大な損傷なのか理解することが可能になります。ウロダイナミック検査プレッシャーフロー検査により神経と圧力を測定することも重要です。

治療(2021年において普及率が高いもの) 軽度の状態でも尿失禁になります。軽度でも生活に支障を感じる人もいます。膀胱も落ちて膣口にまで膀胱瘤がおちてくると、すなわち患者自身で触れるという認識がある場合は、その後病気は進行していきます。尿失禁がある場合は、それが少量でも治療の対象です。軽度な尿失禁では、骨盤底筋体操やスクワットで効果的です。中程度になると、レーザー尿失禁治療で十分治癒し、年齢がわかければ治療後数年以上持続します。高度なものは手術による修復手術が必要です。従来の方法は、尿道の下の膣の真ん中に切り込みを入れて左右に剥離を行い、人工テープメッシュを挿入するものです。現在、もっともエビデンスが十分に報告されている手術が、この中でTVT(お腹にメッシュテープを出すもの)TOT(足の付け根にテープをだすもの)です。TVT手術とTOT手術では、TVT手術が優位とされる論文が出てきております。米国政府統計で2.2パーセント程度の副作用が指摘されています。このポリプロピレンメッシュの材質の特徴は、副作用が出現したあとでメッシュを摘出する際に、その手術は困難があり周囲の組織を切除するリスクがあり、慣れた医師でも難しい場合があります。テープ型のメッシュを短くして両端に釣り針のようなものをつけるMidurethral tissue fixation system (TFS) slingは米政府から警告が出ており、お勧めできません。

自家移植手術(筋膜スリング)の利点と欠点 この方式の場合は、腹部の皮膚を切開し、中から筋膜を取り出してメッシュの代わりにします。これを、筋膜スリングといいます。しかし、そんなに大量にはサンプルを取り出せないので、せいぜい8cmが限界です。しかし、手術に比較して3つの大きな利点があります。①異物がはいりませんので、拒絶反応がありません。このため、感染症、疼痛、随伴症状(頻尿など)が圧倒的に少ないです。②メッシュ手術、とくに腹腔鏡手術ではメッシュで釣り上げる際に角度が付きすぎることがあります。このため尿閉になることがあります。これに対して膣壁から侵入しご自身の筋膜で補強した場合は、この部分だけが極端に強くなるということはありませんので、腹圧性尿失禁はまずありません。③どちらの手術も術後すぐに動くことができます。しかし、数年しますと、メッシュ手術の方は副作用の心配がでてきますが、筋膜の場合は移植組織の劣化がおきます。つぎに、移植手術がメッシュ手術に比較して再発率が高いとよく耳にしますが、実際はそのことを証明した論文は一つしかなく、ほぼ変わりませんでした。最後に、TVT手術と筋膜スリングをあわせたハイブリッド型という考え方が出てきており、注目にあたいします。これはTVT手術の問題が尿道周囲の一部に集中しておこるからです。

手術する上での注意点 大変頻尿になりやすい臓器です。このため、MRIでの形態観察と、ウロダイナミック検査•プレッシャーフロー検査での神経調査をお勧めします。

現在の世界的な注目点 膣よりエネルギーデバイスを挿入する技術が膀胱瘤を修復するのではないかと注目されていますが、論文数が少なく、まだ予測の範囲です。エネルギーデバイスには、ヤグ・レーザー、CO2レーザーなどがありますが、2019年米国政府はこれらの機器での膣のやけどなどの問題を7社に対して指摘しております。指摘されなかったメーカーは、非蒸散性エルビウム・ヤグ・レーザー(フォトナ社)だけでした。この会社の製品でしたらメッシュ尿失禁の手術のトラブル例に補強としての価値があるのではと注目した研究があります。メッシュ摘出手術では、世界的注目は副作用がでた患者に対しての摘出手術です。摘出手術は技術的に難易度が高いために、どのような術式で取り除くのが安全かを研究が進んでおりますが、尿道の場合はあまり成績が良くないためか論文がほとんど発表されません。

レーザー尿失禁治療とは

よこすか女性泌尿器科のホームページからチェック!

奥井医師が長年膀胱脱に取り組んできたので、当院ホームページにはたくさんの資料があります。どれも、イラスト豊富な膀胱瘤の解説です。

妊娠を希望する人でも、以前は尿道メッシュテープを挿入して腹圧性尿失禁を治療しました。しかし、性交渉の違和感や膣の痛み、妊娠中の人工物への不安、などがあり、勧めていいか毎回考え、結局はもう一人出産してからにしてほしいとお伝えすることが多かったです。
レーザー尿失禁治療が出現し、状況はかわりました。このような挙児希望者に対しての治療として、ひとつの選択です。
このため、妊娠出産する人が、人工物よりレーザー治療をの望みやすいということを、統計的に証明しようと論文を書きました。ずいぶん時間がかかりましたが、国際論文になりました。

 

国際論文を読むことで、腹圧性尿失禁を理解する

査読付き国際論文を比較することで、グローバルに理解できます。国際論文では、日本で知られているものとは違う分類で表記します

最初に、国際論文では腹圧性尿失禁を次のように分類します

腹圧性尿失禁は、膀胱頸部と尿道が適切に閉じることができない場合に発生します。これら尿道などの構造が下に移動し、弱くなった骨盤底の筋肉を通って膨らむ(ヘルニアになる)とき、それらは過可動性であると言われます 。ヘルニア、または 膀胱瘤は、尿道の角度を変化させ、尿道を開いたままにして尿を漏らします。腹圧性尿失禁には3つの分類があります。

タイプI  SUI I 膀胱頸部と尿道は開いており、わずかに可動性が高く、ストレスがかかると尿道は2cm未満下に移動します。I型患者は膀胱瘤の兆候がほとんどまたはまったくありません。

タイプ II  SUII II ダウン以上2センチメートルより膀胱頸部および尿道が閉じられるとhypermobileといいます。膣内に膀胱瘤がある患者は、IIA型腹圧性尿失禁といいます。膀胱瘤が膣の外側にある場合、それはタイプIIBとといいます。

タイプIII(重度)SUI III  –尿道括約筋は非常に弱い場合です(内因性括約筋欠損症と呼ばれます)。

また、腹圧性尿失禁だけの場合は、SUI. 腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が同時にある場合は MUIといいます。

 

 

 

当院ホームページでは、論文をわかりやすくブログ化した『医学百科』があります

当院ホームページでは、論文をわかりやすくしたものが用意されています

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腹圧性尿失禁特集は、こちら

 

動画で情報を。当院のYouTubeから。

動画にて、さまざまな尿失禁のエッセンスを紹介しています

比較的容易に理解できるものから、すごく専門的な内容まで、いろんなパターンで準備しています

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