【当院の海外論文】vNOTESという新技術でメッシュ摘出を安全に

vNOTES(自然開口部経管内視鏡手術)という新しい技術は、自然の開口部、たとえば、膣に道具をあてて、内視鏡で拡大して中をみて操作をします。このために、繊細な手術をすすめるとができます。

もともとメッシュを挿入するときと違って、メッシュをぬくときは大変なのです。その理由は、メッシュが炎症のまんなかにあるからです。

メッシュがそばにあると、血管の細胞への栄養血管がおさえつけられ、組織の伸びがわるくなります。このために、炎症細胞が太い血管での血の流れを阻害していきます。そのような場所には、不良肉芽という組織がふえますので、この不良肉芽からメッシュをぬきとるのは至難のわざです。おおきく切開して、まわりは出血が大量におきてしまいます。

こうゆうときほど拡大して確認しながら、1mmずつ剥離をできれば、それが一番よいです。そのためのvNOTESという手術です。

Okui N, Okui M A (March 17, 2024) Pathological Insights on Polypropylene Mesh Complications From Laparoscopic Sacrocolpopexy: A Case Series. Cureus 16(3): e56354. doi:10.7759/cureus.56354

論文のポイント!

最初に、メッシュ手術に伴う痛みについての考察しました。LSC(下腹部手術)に関連する合併症には背中の痛み、お尻の痛み、腰椎炎、硬膜外膿瘍、骨髄炎が含まれます。今までの研究論文では、LSC後に19%の患者が背中の痛みを、4.8%がお尻の痛みを経験したと報告しています。また、メッシュの侵食が4.5%、メッシュ関連の痛みが2.3%であったとも報告されています。別の研究では、LSC手術後に2.2%で腹膜後膿瘍、2.2%で尿失禁の悪化が見られたと報告されています。合併症の発生率にはばらつきがあることが示されています。
今までの研究論文とこの研究に基づき、腰とお尻の痛みが一般的な副作用であると推測されます。発生頻度にかかわらず、これらの痛みは治療可能であると考えられ、治療の対象とすべきです。

2番目に、メッシュの抜去の現状について考察しています。今までの研究論文では、LSCによるメッシュの侵食から生じる腰の痛みの重要性を強調し、合併症を管理する新しい技術の必要性を指摘しています。しかし、LSC後の再手術の発生率は驚くほど低く、関連するデータが報告されています。
この研究は、メッシュ除去手術が潜在的なリスクを持つことを示しています。これは、侵食されたメッシュ部分に対して最小限に侵襲的なアプローチを必要とし、伝統的な開腹手術と比較して感染リスクを最小限に抑える必要があります。このような技術が開発されれば、メッシュ関連の再手術がより広く行われるようになると予想されます。

3番目に、病理学的観点からメッシュ合併症を分析しています。外科治療の最も重要な側面は、ポリプロピレンメッシュがどのように痛みを引き起こすかのメカニズムです。今までの研究論文は、長期間の植え込みが宿主組織に持続的な炎症性異物反応を引き起こし、慢性傷や悪性変化につながる可能性があることを示しています。

4番目に、メッシュ抜去のためのvNOTES外科技術の評価が行われます。vNOTESは、伝統的な開腹手術に比べて数多くの利点が報告されています。これには、最小限の侵襲性、術後の痛みの軽減、回復の速さが含まれます。また、高BMIの患者にも有益であることが示されています。vNOTESは、問題のあるメッシュ領域を直接視覚化できるため、腹腔鏡によるメッシュ除去よりも効果的なアプローチであると予測されます。

5番目に、メッシュ抜去後の再挿入についての考慮があります。フランスの臨床実践ガイドラインは、メッシュ抜去後のPOP再建のためのメッシュ再挿入の必要性を慎重に評価することの重要性を強調しています。これは、合成メッシュを用いたPOP手術後に合併症が発生するリスクが高い特定の患者群が存在するためです。

最後に、メッシュ抜去後の合併症の解決が探求されています。最近の研究は、メッシュ除去後の合併症の治療において重要な進歩を示しています。この研究は、メッシュ除去後の尿失禁に対するUELおよびVELの有効性を示し、これは以前の研究によって支持されています。

この研究は、POPおよびLSC治療後に痛みを経験した患者でのvNOTESを用いたポリプロピレンメッシュの除去を提示しています。vNOTESは、ポリプロピレンメッシュに関連する合併症を持つ患者の痛みを著しく軽減しました。これらの洞察は、将来のメッシュ設計の改善とPOP治療方法の選択に貴重な視点を提供します。

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