直腸瘤

直腸瘤

疾患の特徴 初期の場合は排便障害があります。排便の際に、膣側に直腸が落ちることにより、腹圧がすべて直腸瘤を悪化させているだけで、肛門へ便を移動させることには繋がらないからです。重症の便秘として認識されていて、直腸瘤と認識できている人は少ないです。進行してくると、立位になったときに下垂感がでてきますが、やがて常に膣から直腸が脱出して異物感を感じます。それは、通常、やわらかいもので、うずらの卵のサイズです。進行した例では、肛門から直腸が脱出する直腸脱とは関係が深く、直腸脱を治すために肛門を締める手術をした途端に直腸瘤が悪化したり、直腸瘤を手術すると直腸脱が悪化するという具合に、両者が交互に出現して治療を何度もする必要があるケースになります。

原因 出産により骨盤底筋肉に損傷がおこると生じます。出産が大変長時間であったり、胎児が巨大な場合は、その頻度が高いです。通常、普通分娩では膣前壁の骨盤底への損傷が大きいはずですから、直腸瘤の患者では分娩中に鉗子分娩など特別な処置が行われていることが多いです。現代では行われなくなりましたが、出産が在宅でお産婆さんによる時代では、お産婆さんがお腹の上に乗り押すという行為があり、このような出産をすると圧迫した力で膣後壁の骨盤底筋の損傷がおこります。また、長期間に渡る直腸性便秘も原因になります。

診断 初診時に膣から医師が指を入れて必要な部分に押し当てます。正確な診断には医師が肛門から指を入れて、便のかわりに圧迫しつつ膣の所見をとる必要がある。その時に、患者本人が咳払いなどの腹圧をかけて直腸瘤の程度を診る内診が必須です。直腸を支える骨盤底筋が左右均等に存在することはまれです。直腸瘤により便秘が進行するケースが多いのですが、多くは血流動態が停滞するからです。

(左正常 右直腸瘤)

 

治療 軽度の状態であれば、生活に支障がありませんが、便秘があると将来的に直腸瘤と直腸脱の両方に悩まされるため早めの処置が望ましい。膣口にまで直腸瘤がおちてくると、すなわち患者自身で触れるという認識がある場合は、その後病気は急激に進行していきます。手術による修復手術が必要です。従来の方法は、膣の真ん中に切り込みを入れて左右に剥離を行い、骨盤底筋を修復し、さらに周囲の組織を正中に寄せるものです。子宮頸部が緩んでる場合は、後膣円蓋より侵入して、仙骨子宮靭帯を補強したり、さらに子宮の下垂が著しい場合は、仙棘靭帯に固定をします。これに対して、膣の切り込みからポリプロピレンメッシュを挿入して補強する方法があり、いくつかの技術がありますが、仙棘靭帯周辺部に固定するものが多いです。これらは膣メッシュと呼ばれるもので、発売から10年以上の経過を経て副作用が顕著なため、現在米国では膣メッシュ用のポリプロピレンメッシュは販売されていません。腹腔鏡からメッシュを用いる方法は腹腔鏡メッシュと呼ばれています。この技術は決して副作用が少ないとされているわけではなく、経過観察中といえます。ポリプロピレンメッシュの場合は、副作用が出現したあとでメッシュを摘出することが必要ですが、その手術は困難があり周囲の組織を切除することになります。

メッシュなし手術の利点 この方式の場合はメッシュ手術に、メッシュなし手術の方が圧倒的に有利です。このため2018年の段階(膣メッシュの禁止が2019年)にて米国政府より警告が出されています。メッシュなしの手術では、①異物がはいりませんので、拒絶反応がありません。このため、感染症、疼痛、随伴症状(頻尿など)が圧倒的に少ないです。②メッシュ手術、とくに腹腔鏡手術ではメッシュで釣り上げる際に角度が付きすぎることがあります。このため腹圧性尿失禁になることがあります。これに対して膣壁から侵入しご自身の筋膜で補強した場合は、この部分だけが極端に強くなるということはありませんので、腹圧性尿失禁はまずありません。③どちらの手術も術後すぐに動くことができ、メッシュなし手術は当日午後よりウオーキングが可能です。しかし、数年しますと、メッシュ手術の方は副作用の心配がでてきます。つぎに、メッシュなし手術がメッシュ手術に比較して再発率が高いとよく耳にしますが、実際はそのことを証明した論文はありません。近年の論文では再発率は同じ程度であるとされています。

手術する上での注意点 手術で直腸が傷つきやすい臓器です。このため、メッシュなしの膣式の手術では膣壁の剥離の際に血管や神経を傷つけないように慎重に行います。腹腔鏡でのメッシュ手術では膀胱の角度が付きすぎると腰痛になります。腹腔鏡ですと骨盤の深いところにまで侵入むずかしいからです。角度をつけすぎないようにすることが重要です。メッシュを抜き取る際は、直腸に穴があく病気(直腸膣ろう)になるリスクがあります。

現在の世界的な注目点 膣よりエネルギーデバイスを挿入する技術が膀胱瘤を修復するのではないかと注目されていますが、論文数が少なく、まだ予測の範囲です。エネルギーデバイスには、ヤグ・レーザー、CO2レーザーなどがありますが、2019年米国政府はこれらの機器での膣のやけどなどの問題を7社に対して指摘しております。指摘されなかったメーカーは、非蒸散性エルビウム・ヤグ・レーザー(フォトナ社)だけでした。この会社の製品でしたら膀胱瘤の手術の術後に補強としての価値があるのではと注目した学会があります。腹腔鏡下メッシュ手術では、世界的注目は副作用がでた患者に対しての摘出手術です。摘出手術は技術的に難易度が高いために、どのような術式で取り除くのが安全かを研究が進んでおり、症例報告などの論文が出始めたところです。

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