当院の研究発表 乳がんの治療後の人へのレーザー治療

乳がんサバイバーのための治療

(1)乳がんサバイバーは、尿失禁や頻尿で悩んでいる

あまり知られていませんが、乳がんの治療で女性ホルモンをおさえるアロマターゼ活性阻害剤という薬を使うと、膣や尿道の血流が悪くなります。
このために、尿失禁や頻尿などの症状がでてきます

これは、
乳がん細胞
乳房細胞
尿道細胞
膣細胞
すべて女性ホルモン(エストロゲン)で生きているからです

女性ホルモンをおさえれば、乳房の細胞ごと乳がんの細胞はしぼみます
同時に尿道や膣の細胞までしぼんでしまいます。

 

尿道や膣の細胞がしぼんでしまうと
尿漏れや痛みなどの症状がでます
これを、GSM(閉経後泌尿生殖器症候群)といいます
実は、正式な日本語がまだない病気です

通常は、エストロゲン薬をつかいますが、
乳がんサバイバーの場合は、使うことができません
いままでは、保湿クリームをぬって我慢するしかありませんでした。

 

(2)これからは、レーザーという方法があります

でも、レーザーにも種類があります
CO2レーザーは、この場合は効果がありません

(CO2レーザーなどの従来のレーザーの場合)
レーザーで表面が蒸散されますので、
いわば、穴があきます
すると、しばらくは、痛みを感じないかもしれませんが、
削り取るのがからだにいいわけありません

まして、乳がんサバイバーになると、
膣の中に細胞をつくるする能力のある細胞がなくなっていますので
これほどの刺激を与えると、かえってよくないわけです

インティマレーザーの場合は、さらに強力にレーザーですが、
表面に蒸散をしませんから、傷がなく、
そして、そしきの奥に熱だけがとどきます。
これは、血管を拡張しますので、
体の奥から栄養や細胞が運ばれ、乳がんサバイバーの膣と尿道に
ふたたび組織がもどります。

これは、膣の細胞の増殖につよい刺激になるわけです。

このインティマレーザーは、膣のすみずみまで照射することができます
そして、育てることになるのです

 

(3)研究データ(論文にしたもの)

乳がんサバイバーの女性にレーザーをして24か月の経過をみた図です

これは、尿漏れのアンケートの国際的な指標です
初診のときのデータが、24か月にわたり、よい状態が維持できます
尿漏れは、骨盤底筋体操やスクワットもするので、比較的長期間もちます
(奥井論文 Prog Med2018;7)

これは、膣の乾燥です。こちらは、尿漏れほどではありませんが、20か月ぐらいはよい状態を維持しています。
(奥井論文 Prog Med2018;7)

 

(3)レーザーの照射道具は4種類

レーザーの照射道具は4種類用意しております

膀胱から尿道までを照射するハンドピースです
腹圧性尿失禁の場合は、尿道と膀胱の付け根を重点的にします
膀胱全体の場合は、膣前壁を全体的にします

膣全体を照射するハンドピースです
骨盤臓器脱とくに子宮下垂の下垂感がでてきているひと
膣弛緩とくに下垂感がでている人につかいます

腹圧性尿失禁の場合に、尿道周囲に弱い場所がありますので、その部分を重点的に行います

尿道の中から挿入して、尿道と膀胱の境界にある尿道括約筋に直接照射します

 

そのほかに、肛門から直接照射する方法もあり、それは便のトラブルに対しておこないます

どのハンドピースをどのように使うかは
病状できめます。
医師に判断をさせてください
診察して、弱いところを、重点的に照射します

(4)当院から様々な学会で研究成果を報告しております

2018年に実施される”アジア泌尿器科医学会”では、当院から特別講演をだすことになりました。

当院の研究内容は、

1) 腹圧性尿失禁
2) 混合性尿失禁
3) 切迫性尿失禁
4) 過活動膀胱
でのレーザー光線治療の効果についてです

そのほか
2017年 米国レーザー医学会(サンヂエゴ)
2017年 日本抗加齢医療学会
2018年 英国産婦人科学会
などでの学会発表を予定しております

 

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