アルツハイマー認知症の素因のある人が抗コリン薬を服用した場合

Neurologyに投稿された論文によると、抗コリン薬のMCIリスク、APOE ε4遺伝子保有者で大きいと報じている。

Weigand AJ, et al. Association of anticholinergic medication and AD biomarkers with incidence of MCI among cognitively normal older adults. Neurology. 2020 Sep 2

 

認知機能が正常な高齢者688人(平均年齢73.5歳、49.6%が女性)を対象にした研究成果です。

抗コリン薬の認知機能への影響

および、APOE ε4遺伝子型と髄液(CSF)バイオマーカーとの相互作用を検討しています。

APOE ε4遺伝子とは、

アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)は、アミロイドベータペブチドという老廃物が脳に蓄積することで、 神経細胞に障害を与えます。これが認知症の原因です。アミロイドベータペブチドの蓄積や凝集に関わる物質が何種類もあり、そのひとつが、アポリポタンパク質Eです。その遺伝子である、APOE(アポイー)遺伝子には、主にε(イプシロン)2、ε3、ε4の3種類あり、 2つ一組で遺伝子型を構成しています。このAPOE ε4遺伝子というのは、アルツハイマー認知症で用いられる研究指標です。

 

この研究では、統計方法のひとつであるCox回帰で10年間の軽度認知機能障害(MCI)への進行リスク、線形混合効果モデルで抗コリン薬による記憶力、実行機能、言語機能の3年間の低下度を評価しています。

その結果、抗コリン薬使用によって軽度認知機能障害(MCI)の進行リスクが上昇することが分かりました。

APOE ε4遺伝子保有者が抗コリン薬を服用していると、APOE ε4遺伝子非保有者の抗コリン薬非使用と比べて、MCI発症リスクが2倍以上高くなったとわかっています。また、脳脊髄液中のリン酸化タウ蛋白およびアミロイドß陽性(p-tau/Aß+)の抗コリン薬使用は、いずれも陰性(p-tau/Aß-)の抗コリン薬非使用と比べ、リスクは4倍以上高かったとしています。

 

奥井の解説)

過活動膀胱の治療薬である抗コリン薬は、つぎつぎに新しい薬が開発されるが、毎回問題になるのが、認知症への影響です。新しい薬は、治験の期間が10年というものはありえないので、抗コリン薬の蓄積が身体におよぼす影響は未知数です。この研究は、脳科学のほうから、抗コリン薬の影響をみたものです。

 

 

 

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