骨盤臓器脱

骨盤臓器脱8 インテグラル仮説とメッシュをもちいた手術

インテグラル仮説とメッシュをもちいた手術
(この章は難しいので、飛ばして読んでくださって結構です)

メッシュをもちいた手術は、画期的な手術でした。それは、ウルムステン教授とペトロス教授が提唱したインテグラル仮説というものから始まっています。この仮説そのものは、大変難しいのですが、次ぎの絵のようなものです。

(英語なので、わかりにくいのは、ごめんなさい。)

インテグラル仮説では、とても大胆なことに、膣をやや水平に位置させて、そのうえに子宮が乗っているようなイメージ図になっています。これは、実際に患者さんのレントゲン検査をするとこの位置に骨盤内臓器にあるのです。すると、骨盤内の臓器は、前の方向、後ろの方向、上下の方向の3つに、ベクトル(高校の数学にあった力学のことです)が存在するのです。このベクトルの方向に、テープやメッシュをいれて、補助をしていけば、ちょうど良いところに手術が、簡単に、できるようになるのです。高校の数学がこんな時に役立つなんて、おどろきです。

しかし、この仮説は結局、メッシュの商業主義のためのコマーシャル的なところがあって、メッシュの衰退とともに、中心的な位置からはずれてきました。

骨盤のベクトルを考慮して治療をすれば、簡単になおす方法がわかるというのは、以前から取り組んでいることです。たとえば、姿勢のはなしです。

こんなこと考えていました。姿勢のことです。背中がまがって、姿勢がわるいと、やっぱり体の中の力関係がおかしくなりますね。腰がいたいとか、いろいろ障害が出ればるほど、やっぱり生活も大変です。だから、僕は、すこしでも生活が楽になるようにと、高齢のひとだって、がんばって手術するのです。

メッシュをもちいた手術(アメリカやイギリスで問題になっている手技)

では、メッシュをもちいた代表的な手術をひとつお見せします。

さて、この絵はTVM手術といいます

(絵:奥井識仁 保健同人社)

これは、TVM手術という名前でさかんに宣伝されていた術式で、メッシュを挿入することで、膀胱をもちあげるようにします。
このTVM手術。こんなに盛んにTVMという言い方で宣伝しているのは、実のところ日本が一番おおいように感じます。もtもとは、フランスのグループがTVMという言い方をはじめたので、おもしろいもので、名前は、国がかわると違うんです。つまり、それだけ確立していないということです。

この手術の何がいけないとかといえば、
組織の圧迫ではないかと考えます。
それはまだ証明されていませんが、組織が圧迫されていると血流が低下して、
組織の成長がわるくなり、そこに、一度でも細菌などがはいれば、おいだせません。
それに、メッシュそのものの材質の拒絶反応もあります

そこで、一般の患者さんや、患者さんの息子さんは、このように考えてください。
性器脱の手術の基本は、膣におちてきた膀胱を、切るとるのではなく、膀胱をもちあげて、よぶんな膣の粘膜を縫縮する手術である。
そして、それでは改善できないほど、膣や膀胱のまわりの筋肉がよわっている人には、人工のメッシュをもちいてサポートする。そのサポートの方向は、骨盤の力がかかる方向。その理論が、インテグラル仮説で、最近わかったばかり。そのため、まだまだ、これからどうなるかわからない。でも、おすすめの一つには違いない。十分考慮の価値がある!!

メッシュは当初は、補強材でした
それがいつのまにか、つりあげる柱のようなものにかわっていきました。
 



アメリカの雑誌などでは、このような形の挿入をするとイメージ絵がでてます。

ジョンソン&ジョンソン社のメッシュが唯一、日本で医療認可をうけていましたが、販売中止になりました。アメリカでは、ジョンソン&ジョンソン社が、挿入するメッシュをあらかじめ形をつくって販売しています。それが、プロリフトという商品です。その商品の案内書には、このようなイラストがありました。(なお、いまは発売されていません)

こちらの雑誌は、2009年の国際学会でのワークショップで、人工メッシュの問題点が指摘されました。読んでみておもうのは、いままで懸念されてきたとおり、人工メッシュが術後に露出したり、感染したりすることです。

思えば、このときから米国で中止になるまで10年を必要としました。そのために、当時の話し合いがなかなか生かされなかったのです。

骨盤臓器脱

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