間質性膀胱炎・膀胱痛症候群

当院では、どの治療をしても治りがわるい間質性膀胱炎に取り組んでいます

その方法は、以前から有望株のレーザー治療です。




膀胱に尿がたまると激しく痛みを感じる病気で、痛みを回避するために、何度もトイレに行きます。しかし、尿に細菌はありません。



間質性膀胱炎・膀胱痛症候群は慢性的な膀胱の状態であり、膀胱と骨盤領域に痛みと圧迫が繰り返し発生し、しばしば痛みを回避するために頻繁に排尿する必要があります。1日24時間、1日40、50または60回とトイレに行く女性もいます。

症状が非常に多様であるため、さまざまな分類方法があります。
米国泌尿器科学会のガイドラインでは、すべての方を、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群(IC/BPS)
欧州間質性膀胱炎研究会では、膀胱痛症候群(BPS)
日本では、すべての方を間質性膀胱炎・膀胱痛症候群、そして、細かい分類として膀胱内視鏡で潰瘍のある人を”ハンナ型間質性膀胱炎”、潰瘍のない人を”膀胱痛症候群”と区別しております。


国際的には、この病気をもつ100万から200万人の中で、女性は男性を8対1で上回っており、ほとんどが40代前半に診断されています。この理由はわかっていません。

アレルギー、片頭痛、過敏性腸症候群、線維筋痛症(筋肉痛を引き起こす状態)、慢性疲労症候群、および外陰部痛(感染または皮膚疾患によって引き起こされない外陰部の痛みまたは焼けるような感じなど)を含むいくつかの病気が引き金になっている可能性はあります。


完全になるような治療法がないため、多くの治療法を単独でまたは組み合わせて、ある程度の緩和をめざします。どの治療に最もよく反応するかを予測する方法もありません。


評価は、本人から痛みの程度を聞くこと


現在、間質性膀胱炎を正確に評価する方法はありません。米国FDAの教育スライドでは、NRS-11という評価を推奨します。これは、痛みの最大を10、まったく痛みないのを0として本人に話していただいて、記録するものです。



考えられる原因として、アメリカ政府(FDA)のひとつの見解

ICの正確な原因は誰にもわかりません。おそらく複数のメカニズムが関係しています。世界中が注目するのは、グリコサミノグリカン(GAG)層です。
このGAGは、コンドロイチン、ヘパリン、ヒアルロンさんなどのムコ多糖体やその類似物質です。GAG層の欠損により、膀胱の裏にある細胞(尿路上皮)が保護され、尿からの有毒物質が浸透し、組織に炎症を起こすことがあります。炎症を起こした血管は、膀胱の内壁に小さな出血領域を作ります。間質性膀胱炎のほとんどの人はこの体化を起こします。

GAG層の欠陥により、尿中の毒素が漏出し、その下にある神経および筋肉組織を損傷する可能性があります。これは、この間質への流入は、カリウムもあります。そして、このことで、痛み物質サブスタンスPが発生します。すると、マクロファージが活性化して、過敏症を引き起こす可能性があります。マクロファージそのものは、間質性膀胱炎に特異的ではありませんが、なにかの免疫システムの異常をしめしています。マクロファージは、ヒスタミン・セロトニン・トリプトファン・TNF-アルファー・NGFの物質をだすことで、痛み物質サブスタンスPを増やします。

別の研究ラインは、ICを持つ人の尿にのみ含まれる物質である抗増殖因子(APF)を中心にしています。APFは、膀胱の内側を覆う細胞の正常な成長をブロックするようであり、膀胱組織の損傷または刺激に続く治癒プロセスを妨げる可能性があります。ICの診断テストを探している科学者は、APFを可能なバイオマーカーとして考えています。


そこで、米国FDAに示された間質性膀胱炎の発生メカニズムについて



さて、そうなると、GAG層の復活、間質の再生、痛み物質の抑制、アレルギーの抑制、といったところが、この病気をなおすポイントです。
最初の解決に近いところが、GAG層の破壊から間質の破壊がある領域です。
この部分の治療は、多くの医師が挑戦してきました。



米国の治療はGAG層の原料の投薬。日本は、膀胱拡張が基本

そこで、米国ではGAG層の原料であるグリコサミノグリカンです。商品名は、エルミノンといいます。日本で入手することはできません。これは、服用している間だけ効果を示します。つまり、服用をやめれば、またもとに戻ってしまいます.さらに、最近の論文(Nickrl JCら 2015 J Urol)では、前向き比較試験で有効性がないというものもあります。
日本では、次の治療が推奨Bです。残念ながら推奨Aのものはありません。
投薬:アミトリプチン:
膀胱注入療法:DMSO
内視鏡治療:膀胱水圧拡張
けい尿道ハンナ病変電気切除・焼却術
けい尿道的ハンナ病変レーザー治療
これらの治療についての効果期間に関しては米国FDAの解説スライドでは、膀胱水圧拡張が数か月、その他は、個人差あり、と決定的な治療とはしていません。DMSO膀胱注入療法は、日本で臨床試験中です。


ハンナ潰瘍に対しての切除


ハンナ潰瘍に対して、この病変部を切除さえすれば、肥満細胞・リンパ球・形質細胞などの粘膜に浸潤している炎症細胞が除去され、サイトカインなどの炎症性因子の減少、興奮性の高まった知覚神経の背うjと、焼却後線維化による組織再生により改善するものと考えられた。
このため、当初は、ハンナ病変の電気メスによる切除が行われた。しかし合併症として膀胱穿孔、出血、瘢痕組織による尿管口のひきつれや変形などの問題が出現する。

最初におこなわれたのは、電気メスによる切除ですが、それは、やがてレーザーによる治療に代わっていきます。


間質性膀胱炎の潰瘍に対するレーザー

間質性膀胱炎にレーザーを照射することは、1994年にMalloyらが、Uro Clin North Amに報告しました。27人の患者に対してYAGレーザー治療を行い21例で改善を認めたが、18か月いないに12例(45%)が再発しました。
次の論文は、Rofeimらが、2001年にJ Urolに報告しました。潰瘍を有する24例に対しておなじくYAGレーザーを実施し、2から3日以内に全例で症状(疼痛、尿意切迫感、頻尿、夜間頻尿)が改善しました。しかし、術後23か月までに11例(46%)が再発して、追加治療を行うことになりました。


なぜハンナ―潰瘍にレーザー照射をするのか?
レーザーは、電気メスよりも細かい穴をあけて、エネルギーを組織に進達させるために、組織の修復がはやまるためです。
ただ、初期のレーザーは、膀胱へ挿入するには、光ファイバーで細いカテーテル状にして、内視鏡で到達します。この光ファイバーがトラブルを起こしやすく、管理が大変でした。




そこで、当院ではレーザーの種類をより進歩的なものに変えてみた!


期待されているのにかかわらず、研究がすすまないYAGレーザー治療は、このあと20年間に急激に進歩しました。YAGレーザーには、エルビウムYAG、ネオジウムYAGなど、さまざまなタイプがでてきたのです。このタイプは表面に傷をつけませんので、深層まで到達します。このことを利用して、膣から膀胱へのアプローチができるようになります。


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非アブレーション・エルビウムYAGレーザー
表面に蒸散作用をさせず深層にレーザーが届く。水と反応する作用をもつ。表面に傷をつけないということは、修復過程は深部であり、コラーゲンの修復に直接作用できる。このコラーゲンが増えることが、GAG層の修復をうながす可能性があります。

ネオジウムYAGレーザー(ピアノモード)
ネオジウムYAGは、ヘモグロビンに反応します。この性質を利用すると、潰瘍のまわりの血管を拡張することが可能になります。血管が拡張されると、組織を修復するための細胞が血液をかいして脊髄から流れてきます。こうして、あたらしい細胞が生まれてきます。

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当院での試みは世界ではじめてのスムースレーザーでの間質性膀胱炎の治療

私たちの施設では、10年以上にわたり間質性膀胱炎について取り組んでいますが、これといった成果がでませんでした。どの治療法も、時間がたつと再発するものしかなく、これはアメリカFDAの教育スライドと同じ結果です。
しかし、2019年イタリアで行われた膣スムースレーザーの会議(VELアカデミー)にて、ほとんどの症例で、スムースレーザーを定期的にかけていくと、10か月ぐらいでほぼ完治のレベルの痛みの改善が得られることがわかりました。
この研究レポートは、欧州の婦人科系学術誌に英語論文として採用されました。


他の要因も重要

過敏性腸症候群や子宮内膜症など、他の原因による慢性的な腹痛または骨盤痛もある女性では、これらの症状が最悪のときに間質性膀胱炎が悪化することがあります。性交は数日間続く痛みを引き起こし、月経とともに症状が悪化することがあります。一方、一部の女性は妊娠第2期および第3期に完全な緩和を経験します。
食べ物では、イチゴ、オレンジ、トマト、チョコレート、スパイス、カフェイン、アルコール、クランベリージュースなどの尿を酸性化する飲料など、特定の食べ物や飲み物を摂取すると症状が悪化する人もいます。

 当院受診の手引き

1)他院(大学病院)などで、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の診断をうけた方のみです。これは、日本の規則で、この疾患は麻酔科専門医による麻酔における膀胱水圧拡張にて診断するからです。

2)膀胱水圧拡張で、膀胱が避けてしまう『膀胱破裂』という合併症があります。これを起こした方では、当院の治療では改善しません。この病態については、簿心配な人は当院で検査し、合併症の有無を確認はできます。

3)少なくとも間質性膀胱炎の治療を2種類以上受けて、効果が得られなかった方にかぎります。当院の治療は、レーザー治療であり、多少のエビデンスはあるものの、事実上2019年においては、積極的実施は当院のみです。

4)レーザー治療は自費です。いままで一番少なかった人で1回、多かった人で10回目に、まったく痛み止めを飲む必要がなくなりました。平均は4回から8回ではないかと予測しています。(国際更年期障害学会医学誌 CLIMACTERIC 2020;論文許可)。 料金は通常の尿失禁のレーザーの5万円引き(通常の尿失禁は10から11万円ぐらい)です。

5)当院は、年に1回の間隔で、外部倫理委員会にて治療方法の審査をうけております。その上で、UMIN-CTR(大学病院ネットワーク・治療研究登録)に登録しております。通常は、その際に、自分のデータを使用しない権利(オプトアウト)というのがありますが、間質性膀胱炎そのものの数が少ないので、倫理委員会に申請登録する費用が高いのですが、それは当然当院が支払います。また、研究をかねているので、治療費を一部当院が負担します。しかし、治療後にデータ使用のオプトアウトをされると、当院があとで困ってしまいます。ご理解いただき、治療データの使用の同意をされる方だけにしてください。
















































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インフォーメーション


法人


間質性膀胱炎の論文

GAG層を修復するために、膀胱膣間のコラーゲンを増やすレーザー治療。英語学術論文として国際更年期障害学会医学誌 に採用されました。


イタリア研究会で評価

間質性膀胱炎に関する当院の発表は、イタリアの学術研究会で評価をうけました。


当院のレーザー論文

当院のレーザー治療は、世界的なトップ医学誌に採用されました。



ハーバード大の女性像

  • ハーバード大学ブリガム&ウイメンズ病院に飾られる像。人間は、赤ちゃん、少女時期、成人時期、老年時期。すべて違います。それぞれの特徴をとらえて、自分のカラダの使い方を覚えることが大切。


今日の治療指針

この"今日の治療指針"は臨床医の教科書。この本の排泄ケア部門を担当しました。これまで看護だけと思われがちな『排泄ケア』分野を医師のとりくむべき学問にしたいという努力が認められ嬉しいです。

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