サイエンスなお話しです

蜂は集団でひとつの脳


デボラ・M・ゴードンDeborah M. Gordon という女性生物学者がいる。スタンフォード大学教授でハーバードで研究をしてきた。彼女は、アリの『群知能(ぐんちのう)』という研究をしている。
アリは少なくとも単体では、職人としても、戦士としても一人前といえない。ほとんどのアリは、次に取るべき行動を決められない。しかし、集団になると違う。僕たち人の脳に匹敵する能力をしめす。この集団をコロニーという。

賢いのはアリではない。アリのコロニー(集団)が賢い」。餌場への最短ルートを見つける、仕事に応じて労働力を割り当てる、近隣の敵からなわばりを守るなど、個々のアリでは解決できそうにない問題も、コロニーなら答えを出すことができる。1匹ずつのアリは小さな操り人形のようなものだが、コロニーになると周囲の変化にすばやく効率的に対応できる。それを可能にするのが、群れが生み出す知能「群知能」だ。ゴードン先生はこの研究の第一人者である。



蜂の攻撃は『最短距離問題』


蜂におそわれたとき、その蜂は、集団コロニーの一部として、ヒトへの最短距離を計算する。ヒトのほうも集団であるし、トレイルランニングの大会なら走っているのだから、その方向を計算してくる。おそろしい相手である。

これは、難しく書けば、
二直線
{2x+3y+4=0
{2y+z+3=0

{7x-3z-11=0
{x+3y+3z-6=0
の間の最短距離dを求めよ。

という問題を瞬時に計算していまうようなもの。

巣によっては5万匹がひしめくバチは、個々の意見の違いを乗りこえて、コロニーにとって最善の道を選べるのだ。こうした研究をしているのは、コーネル大学のトーマス・D・シーリー教授, Thomas D. Seeleyだ。

シーリー教授たちは10年前から、セイヨウミツバチのコロニーを観察して、彼らがどうやって新しいすみかを選ぶのかを探ってきた。毎年春の終わり、ハチの数が増えすぎて巣が手狭になると、コロニーは分裂する。そして女王バチと数匹の雄バチ、それに約半数の働きバチが古い巣を飛びだし、近くの木の枝に集結する。そこから一部のハチが、新しい巣をつくる場所を探しに出かけるのだ。選択肢をできるだけ増やす。いろんなアイデアを自由に競わせる。効率的に選択の幅を狭めていく。ミツバチのこうした意思決定戦略。

スズメバチの攻撃は、まだ未知だけど、おそらくミツバチの計算をこえる素早さで、攻撃ターゲットへの最短コースをきめる。おそろしい相手である。



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