手術による過活動膀胱の治療


過活動膀胱についてまとめます

過活動膀胱という症状症候群は以下です

・突然がまんできないような強い尿意を感じる(尿意切迫感)

・突然がまんできないような強い尿意を感じ、トイレに間に合わずもらしてしまう(切迫性尿失禁=UUI

・日中のトイレ回数が多い。就寝後、トイレのために1回以上起きる。(昼間/夜間頻尿)

この過活動膀胱のうち、今回の手術による治療対象は、切迫性尿失禁UUIです



切迫性尿失禁 UUI

切迫性尿失禁UUI

切迫性尿失禁を英語で“Urgency Urinary Incontinence”といい、その頭文字をとって、UUIという言い方をします。

UUIとは突然強い尿意を感じ、トイレに間に合わなくなる症状のこと。過活動膀胱の症状のひとつで、とても多いものです。

過活動膀胱とは、尿意切迫感(急に起こる、抑えられないような強い尿意で、がまんすることが難しいもの)の症状のことを言いまして、治療の目安になっています。


UUIをおこしてしまう人の割合

40歳以上の男女での統計です。

1回以上UUI(切迫性尿失禁)をおこすひとは8.9%(男性7.3%、女性10.0%)、

11回以上UUIをおこすひとは5.3%(男性4.5%、女性5.7%)

かなりの高率におこっているわけです


日本排尿機能学会誌14(2):266, 2003



過活動膀胱のうち、UUIのある人の割合は?

これは、UUIを呈しているのは64%というデータがあります

  

              

日本排尿機能学会誌14(2):266, 2003



過活動膀胱という症状をおこす原因は?

UUI(切迫性尿失禁)を示す過活動膀胱は、膀胱に尿をためる機能が様々な原因によって障害されておこります。その原因としては、@神経が原因と考えられるもの A神経以外が原因と考えられるもの に分けられます。

 神経が原因と考えられるもの ・脳の障害(脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、パーキンソン病
・脊髄の障害(脊髄損傷、多発性硬化症
など) 
 神経以外が原因と考えられるもの  ・膀胱の血流障害 
・自律神経の亢進 
・膀胱の加齢 
・膀胱の炎症
 


UUIを引き起こす過活動膀胱の一般的な治療

過活動膀胱の治療には、おもに薬物療法と行動療法が一般的です。
薬物療法では、膀胱の勝手な収縮を抑える働きの薬をつかいます。これは、「抗コリン薬」や「β3アドレナリン受容体作動薬」です。
抗コリン薬は膀胱の収縮を抑え、十分な尿をためます。
β
3アドレナリン受容体作動薬は膀胱の筋肉をゆるめ、尿をためることができるようにします。行動療法には、生活指導、膀胱訓練、骨盤底筋体操などの理学療法があります。





注目(1):過活動膀胱は骨盤臓器脱手術でなおるケースがある

ここにあげたように、過活動膀胱よくにUUIが症状として強いときは、薬の投与と生活指導でなおします。しかし、なかなか改善しないケースがあります。これは、骨盤臓器脱です。
よこすか女性泌尿器科は、骨盤臓器脱専門の手術クリニックなので、この治療にとりくんでおります



2010年に当院がだした国際論文では、骨盤臓器脱はメッシュを用いても、用いなくても過活動膀胱の症状が改善することがわかりました。

重要(1)過活動膀胱のある骨盤臓器脱は、メッシュをつかっても 使わない手術でも、その症状が緩和する

この時は、骨盤臓器脱のみに絞って研究し、成果をだすことができました。


次に我々が挑戦したのは、骨盤臓器脱でない人への過活動膀胱の症状の緩和です


注目(2):膀胱の血流のわるい人は、レーザー手術で過活動膀胱の症状が緩和する

2017年のアメリカレーザー学会に提出した論文です


2017年4月米国にて開催の学会

この研究では、膣からインティマレーザーを照射することで、膀胱への血流の改善をこころみました
これは、あたためるという意味です
YAGレーザーという高度な医療機器をもちいて治療します
当院のもちいているインティマ・レーザーは、米国で唯一、尿失禁に認可されています

この治療では、確実に尿失禁が減少しました。

重要(2)米国での治療インティマ・レーザーは、 過活動膀胱や尿失禁の改善をする可能性が高い

この研究は当院だけでなく、米国のいくつかの施設からも発表されています
将来性のある分野であるといえます


あたらしい時代の頻尿の治療


 10
年前に手術で過活動膀胱が改善することを世界で初めて国際論文にしたのは当院です。そして、この分野は新しい時代に入ります。それは2つの方法で、ひとつは心臓ペースメーカーと同じ人工物を臀部に埋め込んで膀胱の神経をコントロールするもの。もう一つは、心臓アブレーションの技術を取り入れて、膣から同じYAGレーザーを照射することで、尿道や膣の細胞の活性・新しい血管の再生を促す自然なもの。

前者は、2017年より日本でも保険適応になりますが、後者はまだ5年以上遅れるでしょう。そこで、アメリカFDAが唯一尿失禁への効果を認めたレーザー機器をそろえ、国内の他の施設が1回(自費)20万円前後でしているものを、17万円(外税)で実施しています。全米の集計では5万人が治療をしていて、75%に効果があります。当院で100人の治療をしたところ同じ結果が得られ、米国レーザー医学会で発表しました。国際評価を受け英語論文を予定しています。日本語論文は老年医学誌に載りました。

抗凝固剤(血液サラサラ薬)を服用していても受けることができます。人工メッシュを挿入したくない妊娠希望の若い女性にも選択していただいています。いままで治療できなかった多くの方を救えるツールになると確信しております。

 治療方法  理論  利点  欠点
 投薬  膀胱の収縮する神経を薬で抑える 必要な時期だけ投薬をコントロール  薬の副作用として、便秘・のどのかわき。論文により差があるが、認知症の可能性も示唆される
 仙骨内にペースメーカー機器をうめこむ
(仙骨電気刺激)
膀胱の収縮する神経を埋め込み型電気ペースメーカーで調節
もともとの理論は、不整脈に対する心臓のペースメーカー
薬で聞かないような重症の頻尿がなおる  一度挿入すると機械が身体に入っていることに対する制限がある
 YAGレーザーにより光線治療をする

 膣からレーザーを当てることで細胞の再生と血管の再生を促す。細胞が生えれば、尿漏れをおこさなくなる。
もともとの理論は、不整脈に対するレーザー・アブレーション

安全で副作用がない。
75%に効果
細胞が再生しない人が25%ぐらい
2から3年すると、また老化によりもとにもどるが、その分安全の裏返し。再度レーザーを当てればよいが、手間がかかる




ページトップへ

TestSite.com MENU